左官工事

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左官職人の想い

左官職人の想い

現代の左官仕事は工業製品化が進み、
短い工期で仕上げる簡易工法が主流となっています。

過去の技術として切り捨てられがちな土壁・漆喰仕事。
しかしそこには、不変の価値があると感じます。

千年以上脈々と受け継がれる
究極ともいえる技術「日本壁」を
後世に繋げていきたい。

先人からの伝承技術 左官の仕事

先人からの伝承技術 左官の仕事

構成する素材は「土」「漆喰」昔から伝わる伝統的な壁材料です。
柱・梁で構成された軸組の空間に壁を作るにはまず、
「小舞」と呼ばれる木や竹などを格子状に編んだ下地を設けます。
その小舞に絡ませるように
荒土(粘土にざっくり刻んだ藁を混ぜ発酵させたもの)を塗り乾燥させ、
さらにきめ細やかな中塗土を重ね、
表面を漆喰で塗りあげ美しい白い壁が作られるのです。

機関紙「薬師寺・特集 東塔の瓦と壁 ー第202号ー」より

消えつつあるもの

消えつつあるもの

現代の左官職の状況は厳しいものです。
建築様式が工業製品化し、土壁・漆喰を使った伝統的な日本壁の建物が激減。
古式の技術を持つ職人も高齢化が進み、
なりわいとして向き合うのが難しい職種になりました。
扱う素材も天然素材のため原材料の枯渇や製造業者さんの廃業が相次ぐなど
様々な面で難しい時代を迎えています。

機関紙「薬師寺・特集 東塔の瓦と壁 ー第202号ー」より

後世への伝承

後世への伝承

大きな流れを変える事は出来ないのかもしれませんが
せめて手の届く範囲でも!と大切な「物」や「事」を次世代に繋ぐために
努力する人々がまだまだ健在です。
そして見守り応援してくださる沢山の人々も。
日本の良きものを
大切に想う気持ちが未来に続く道を切り開いてくれると信じています。

機関紙「薬師寺・特集 東塔の瓦と壁 ー第202号ー」より

東塔の壁

拝啓 薬師寺 東塔さま

飛天が舞う水煙 裳階をまとった美しい姿
千三百年もの時を超えてそびえ立つ孤高の存在

貴方のその全てに
魅せられ 惹かれ
古人の願い
想いに触れるたび
心が熱く、魂が震える

万感の想いを抱き見上げています

敬具
機関紙「薬師寺・特集 東塔の瓦と壁 ー第202号ー」より

国宝建築 薬師寺東塔

国宝建築 薬師寺東塔

薬師寺創建当初から現存している、平城京最古の建造物「薬師寺 東塔」。
修理を受けながら現在に至っています。

12ヶ年に渡る史上初の全解体修理事業

12ヶ年に渡る
史上初の全解体修理事業

奈良県文化財保存事務所直営壁工事に
左官頭領として携わらせて頂きました。

左官衆

左官衆

千年を超えて現存する木造塔の中でも突出した唯一無二の美しさを誇る東塔。
他に類を見ない到底一人の手には負えない大仕事。
それを可能にしてくれたのは志を共にする仲間の存在です。
現在の左官業界は仕事の減少に伴い若手後継者が育たず技を持つ職人も高齢化。
伝統工法に長けた職人を確保するのが難しい時代の流れの中で、
技と想いを持つ仲間との縁に恵まれた事。
それが無ければ工事を無事終える事は出来なかったでしょう。

機関紙「薬師寺・特集 東塔の瓦と壁 ー第202号ー」より

現場作業開始

壁下地つくり

01壁下地つくり

壁を構成する最初の段階として壁下地を作ります。
一般的に良く知られているのは割竹を用いた「竹小舞」ですが
東塔の場合は製材時に発生する木の割端材を使った「木小舞」です。

機関紙「薬師寺・特集 東塔の瓦と壁 ー第202号ー」より

荒壁土つくり

02荒壁土つくり

土は自然の大きな流れの中で循環する素材。
役目を終えた土壁は解体され土に還ります。
再び労力を加える事で再生され
新たな材料(壁土)として生まれ変わる事が出来るのです。

機関紙「薬師寺・特集 東塔の瓦と壁 ー第202号ー」より

荒壁塗・中塗・漆喰塗

03荒壁塗・中塗・漆喰塗

白鳳の職方が想いを込めて塗り込めた土壁を、
現代を生きる自分達が同じく塗り込め新たな土壁を生み出す事が出来る。
そう考えると感慨深く同時に言葉には言い表せない喜びを感じました。

機関紙「薬師寺・特集 東塔の瓦と壁 ー第202号ー」より

東塔美しい姿へ

04東塔美しい姿へ

千三百年という途方もない時間を耐えた
当初材の風蝕肌に愛しささえ感じつつ、
果たすべき仕事に向き合う毎日が過ぎて行きました。

日に日に整ってゆく壁。
漆喰の無垢な白さが創建時へと想いを誘います。
季節が再びめぐる頃、東塔はついにその美しさを取り戻しました。

拝啓 薬師寺 東塔さま

共に過ごした一年半

貴方が見守り続けた千三百年に比べれば
ほんの刹那の出来事
でも刹那の重なりが未来へ繋がる唯一の道
美しい姿を待ち焦がれた多くの人達に
やがて生まれくる次世代の人達に
心の拠り所
未来へと導いてください

敬具
機関紙「薬師寺・特集 東塔の瓦と壁 ー第202号ー」より

主な文化財施工実績

重文 法隆寺 中院本堂壁工事
重文 法隆寺 宝蔵院土塀修復工事
重文 旧小林家住宅 竈復元工事(東京 檜原村)
重文 法隆寺 薬師坊 荒壁工事
重文 村井家住宅 荒神付七つ口竈復元工事
重文 中家住宅 荒神付十一口竈 塗り替え工事
国宝 当麻寺 西塔壁工事
国宝 薬師寺 東塔壁工事